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久しぶりに 時間が出来たので、いつものように海に行って諭くんの姿を探した。
初めて逢った日のように 諭くんは やっぱり一人で釣糸を垂らしていて、その変わらない姿に 僕は ホッして癒される。
「諭くん」
後ろから声をかけて、缶コーヒーを差し出した。
諭くんは ゆっくりと振り返って、ああ、と静かに返事をした。
「釣れますか」
「いやあ… あんまり」
諭くんは また海を見つめて 何かを考えているみたいだった。
「久しぶりだね、章クン」
「うん、ここんとこバイトやらレポートやらでバタバタしててさ」
「そう」
諭くんは あまり興味も無さそうに 缶コーヒーのラベルを見ている。
「あ、これ、ありがとうね」
「うん」
なんとなく 会話が続かなくて、以前は 気にならなかった沈黙が 少し恐いような気がした。
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