笑顔の裏側

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夕方まで過ごしたが、結局 収穫は、二人で釣り上げた一匹だけだった。 「結局 章くんが 釣ったみたいなもんだね」 諭くんは またフニャと笑う。 「いえ いえ そんな…」 僕が 恐縮していると、諭くんは 道具を片付け、不意に思い付いたようにポケットから小さなカードを取り出した。 「お礼に これ あげる。パンの割引券。メロンパンが50円になるの」 「へぇ、ありがとうございます」 薄いブルーのそのカードには 「割引券」と大きく書かれ、その下に小さく店の場所と名前が書かれていた。 「ブラウって 読むのかな…」 「Blau」という綴りは 英語では 無いようだった。 「何語かな、ドイツ語?」 「そうそう、さすが大学生」 諭くんは 嬉しそうに言うと、店の場所を教えてくれた。
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