第百十六章 藤黄の鎌

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 だと言うのに、目の前の少年はアッサリと自らの愛用の武器を手放して見せたのだ。とてもでは無いが、自分では真似出来ない。 「これで終わりです」  静久はもう片方の阿修羅鎌を振り上げて、女性の顔面目掛けて勢い良く振り下ろそうとするのだが、女性に腹部を蹴り付けられて後方へと吹き飛ばされてしまったが為に、それは遮られてしまった。 「足癖が悪い人ですね」  土宮家の嫡子は呆れた様な口調で言い放ちながらも、空いていた右手の掌を前へと翳し、その掌に先程手放した阿修羅鎌を再度具現化して見せる。 「テメェ…! よくもアタシを無様な眼に合わせやがったな…! このナイト・オブ・フィフティーツーの唐梨子万里様をよ…!」  唐梨子と名乗る女性が素早く立ち上がりながらも、鬼の様な凄まじい形相で激昂したかの如く鋭く叫ぶ。  そんな彼女の言動を目の当たりにした藤黄の支援者と謳われたミュータントの少年は、さほど動じた様子も見せる事無く、淡々とした意見を口にするべく口を開く。 「フィフティーツー。五十二ですか。円卓の騎士の座にすら就けない半端者」  その言葉を引き金にして、唐梨子の中で何かが音を立てて切れた。 「あんまり、調子に乗ってんじゃねぇぞ! このクソ餓鬼が! 潰してやる! 砕いてやる! 刻んでやる! 削ってやる! この世の苦しみと屈辱をその身に刻み込んで、テメェをアタシの前に跪かせて、散々命乞いを言わせた後、無惨にもぶち殺してやる!」  ナイト・オブ・フィフティーツーの称号を持つミュータントの女性が激昂した様に叫んで見せた後、自身の手にしていたメイス状の武器に視線を移し、ジロリ、と睥睨する。 「テメェもテメェだ、山荒! いつまで寝てんだ! 適当に抜くのもいい加減にしな!」
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