第百十六章 藤黄の鎌

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 唐梨子はそう叫んで見せた後、手にしていたメイス状の武器を床へと強かに叩き付ける。  その直後、ナイト・オブ・フィフティーツーの称号を持つミュータントの女性の左手に、新たにモーニングスターが具現化される。 「…ッ!?」  その光景を見た静久は驚いた様な表情を浮かべて、思わず唖然としてしまう。  そんな彼の反応を見て、唐梨子はどこか満足げに微笑んで見せた。 「へぇ、アンタ。そんな顔も出来るんじゃねーか。アタシのこの武器はな。マイペースでよぉ。時間が経たねぇと、本気になりゃしねぇのさ。持ち主のアタシの意志でも、二つ同時に具現化出来ねぇ上に、二対一式の武器だから、両方揃わねぇと解放も出来ねぇ」  どこか不満げに語るナイト・オブ・フィフティーツーの物言いを聞いて、土宮家の嫡子は何かを悟った様に、やはり、と呟く様に零して見せた。 「その武器は御剣の作品でしたか…」 「へぇ、気付いていたのかい? 流石、ここまで乗り込んで来るだけの事はあるねぇ。冥土の土産に、教えておいてやるよ。この武器の名をね。耳の穴をかっぽじって聞き、目ん玉ひん剥いて網膜にその力を焼き付けな。大山を抉り、崩壊させた事が所以たるこの武器の名は…」  唐梨子は途中で言葉を区切り、二対のモーニングスターを天高く振り翳して見せると、二つの鉄球が軽々と宙へと舞い上がった。 「不倶戴天山荒! 解放!」  ナイト・オブ・フィフティーツーの称号を持つミュータントの女性の呼び掛けに呼応するかの様にして、二つの鉄球が光り輝いたかと思うと、まるで自身の意思を持っているかの様にして、藤黄の支援者と謳われたミュータントの少年目掛けて降り掛かる。 「山荒! アンタ等自慢のその一撃で、そのクソ生意気な餓鬼を穴だらけにしてやんな!」
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