第百十六章 藤黄の鎌

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   2  まるで、生きて意思を持っているかの様にして、自分目掛けて空中を縦横無尽に駆る鉄球の姿を見て、土宮静久は少しばかりの驚愕と辟易にも似た感情の入り混じった表情を浮かべていた。  相手を追尾誘導するタイプの特殊能力と言うのは、そこまで珍しい物では無い。この手のタイプの攻撃の対処法は土宮家の嫡子はしっかり心得ている。  しかし、一つだけ厄介な問題がある。それはあの鉄球が単なるミュータントの特殊能力では無く、最強の武器職人の肩書きを持つ神族のミュータントの少女御剣が鍛え上げた、御剣の作品だと言う事だ。  御剣の作品に切れぬ物無し、なんて謳い文句がある様に、彼女の鍛えた武器はあらゆる物を破壊出来、あらゆる力でも破壊されない。  それに拮抗出来るとしたら、同じ御剣の作品か、神族や魔族に匹敵する程の特殊能力を用いた力を駆使するしか外に無い。  先程、藤黄の支援者と謳われたミュータントの少年がそうして来た様に、神族や魔族にも匹敵する程の力を有する四大貴族と守護二家の技術を以って生み出された阿修羅鎌ならば、御剣の作品を受け止める事位は出来る。  だが、御剣の作品が一度、特殊能力を解放するのであれば、それは別である。特殊能力を解放した御剣の作品を受け止めようとすれば、阿修羅鎌の方が大破してしまうだろう。 ―さて、どうしましょうか…?  静久はどこか面倒臭そうな表情を浮かべて、そんな思考を脳内で過ぎらせてしまう。  追尾誘導型の特殊能力による攻撃へのノーリスクの対処法は三つ。  一つは、追尾誘導型の特殊能力以上の機動力を以って、その特殊能力を振り切ってしまう事。
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