第百十六章 藤黄の鎌

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 もう一つは、自分へと被弾する前に遠距離で撃ち落としてしまう事。  最後の一つは、追尾誘導型の特殊能力以上の防御力を以って防ぐ事。  しかし、相手が特殊能力を解放した御剣の作品であるのならば、それは余り堅実的な話では無いだろう。  まず一つ目は、ここが屋内と言う環境であると言う事。いくら、夢幻回廊の術式によって、壁や床が延長されているとは言え、建物の広さには限界がある。機動力を以って振り切るのであれば、屋外の開放的な広さが必要不可欠なのだ。その為に、これは却下。  二つ目の撃ち落とすと言う方法も難しい。特殊能力を解放した御剣の作品の力は凄まじく、並大抵の力では微動だにしないだろう。よって、これも却下となる。  三つ目の防ぐと言う策も、二つ目と同じ理由で、これも棄却される。特殊能力を解放した御剣の作品を防げる訳が無い。  結論、ノーリスクでは目の前の現象をどう対処する事も出来ない。  そう考えて、静久は小さく溜め息を吐いてしまっていた。ロクな案が思い付かない物だ。こんな事になるのであれば、御剣の作品のマニアである月村歩から、御剣の作品の一つでも借り受ければ良かった。  そうすれば、御剣の作品同士で相殺する事が出来たと言うのに。  まあ、月村家の嫡子は御剣の作品に心酔しているので、貸してくれるかどうかは微妙な所ではあるのだが。 ―ちゃんと前以って準備して来れば良かったですね…  そんな考えを脳内で過ぎらせた後、土宮家の嫡子はその場で踵を返し、自身へと窮迫して来る鉄球へと背を向けて勢い良く走り出す。  屋内と言う環境では、振り切るなんて事は出来ないが、回避し続けて時間を稼ぎ、突破口を見つけ出せないか考えたのだ。
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