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「無駄だよ、無駄! アタシの山荒からは逃れられやしないんだよ!」
唐梨子万里が鋭く叫ぶ様な口調で言って見せながらも、手にしていたモーニングスター、不倶戴天山荒を操作する手に意識を集中する。
確かに、と静久は思う。最強の武器職人の肩書きを持つ御剣が、武器に標的を追尾誘導させると言う概念を注げば、その武器は決して標的を逃がす事の無いハンターとなるのだ。
だが、かと言ってどうする事も出来ないので、土宮家の嫡子は逃げ回り続けると言う選択以外取る事は出来ないのだから。
藤黄の支援者と謳われたミュータントの少年が逃げ続けて、ふと、ある事を思い付いた。
追尾誘導型の攻撃の対処法である三つの案とは異なる、全く新しい方法。
―動きを鈍らせて見ますか…
静久はどこか得意気な表情を浮かべて見せた後、自身の背後に迫る二つの鉄球へと振り返って視線をやる。
その直後、土宮家の嫡子は脇目も振る事無く勢い良く駆け抜け始める。しかし、何を考えているのか、彼の進行方向には通路の壁が迫って来ている。
「どこへ逃げる気だい!? そっちは壁だよ!? 余りに追い詰められて、まともに考える事も出来なくなっちまったってのかい!?」
ナイト・オブ・フィフティーツーの称号を持つミュータントの女性が狂気染みた笑みを携えながらも、哄笑染みた口調で鋭く叫ぶ様に言い放って見せる。
「まさか。そんな事はありませんよ。ちゃんと考えはあります」
そんな彼女の言葉を否定するかの様にして、藤黄の支援者と謳われたミュータントの少年は冷静さを感じさせる口調でそう言って見せた後、床を強く蹴り付けてその場で跳躍して見せる。
その動作は、まるで自ら壁に突っ込もうとしているかの様ですらあった。
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