第百十六章 藤黄の鎌

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「もう二度と喰らわない、か! 随分と言ってくれるじゃねぇか! そんな奇跡が起こる訳がねぇだろ!」  唐梨子はそう鋭く叫んで見せた直後、不倶戴天山荒を勢い良く振り上げ、凄まじい速度で振り下ろすと、鎖に繋がれた二つの鉄球が宙を駆ける。  静久はそれを見て阿修羅鎌を身構え、その刀身部にAS粒子を纏わせ、阿修羅鎌を力強く振り抜いて、藤黄色の光を放つAS粒子を圧縮した三日月型の斬撃を放出する。  藤黄色の光を放つ三日月型のAS粒子の斬撃は鉄球へと命中し、小規模の爆発を引き起こさせ、周囲に粉塵を撒き上げさせる。  だが、破壊するまでには至っていないだろう。相手は特殊能力を解放した御剣の作品。最強の破壊力と、最強の強度を持つのだから。  せめて、自分へと窮迫する鉄球の勢いと速度を殺す位は出来るかも知れないが、それ以上の成果は期待出来ないだろう。 「…ッ!」  そんな時、土宮家の嫡子はそれを見た。  周囲に漂う粉塵が僅かに揺らぎ、その中から掻き分ける様に姿を現わして来た物体に気付く。  それは黒い無数の鉄のトゲだった。不倶戴天山荒の鉄球に敷き詰められる様にして張り巡らされていた物だろう。  藤黄の支援者と謳われたミュータントの少年は自身へと飛来するそれらを、破壊は出来ないまでも、阿修羅鎌を器用に取り回し、その全てを弾いて軌道を変える。  そしてすぐさま、いつでも回避出来る様に身構えるが、不倶戴天山荒の鉄球から切り離されたトゲは、鉄球の様に自身を追尾して来る様な事は無かった。 「なるほど、そう言う事ですか…。ようやく、その鉄球のカラクリが分かりましたよ…」  静久がどこか得意気な口調で言って見せた後、数拍の間を空けてから更に続ける。
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