第百十六章 藤黄の鎌

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「どうやら、その鉄球は何らかの衝撃を受ける事で、鉄球がトゲを射出する様ですね。しかし、鉄球とは異なり、トゲその物に相手を追尾誘導する力は無い」 「へえ、結構良い分析をするじゃないか」  静久の説明を聞き入れた後、唐梨子は感心した様な口調で言って見せた。 「歩様には劣りますがね」  土宮家の嫡子の物言いを聞いて、ナイト・オブ・フィフティーツーの称号を持つミュータントの女性は少しばかり怪訝そうな表情を浮かべる。 「そうかい。なら、アイツと当たらなくてラッキーだったよ」 「ラッキーですか? 貴女方ハンター連合に勤めるミュータントは騎士を名乗っている程ですから、強敵との戦いを望んでいるのかとてっきり思っていましたが」  彼女の言葉を聞いて、藤黄の支援者と謳われたミュータントの少年は小首を傾げる。 「ああ、望んでいたともさ。強敵との戦いをね。自分が円卓の騎士の座から放れる時まではね」  唐梨子がどこか悲痛さを感じさせる口調で言って見せた後、数拍の間を空けてから更に続けて言い放つ。 「円卓の騎士は実力至上主義だけど、結構楽しく仲間達とやれていたのさ。でも、次から次へと若い世代が台頭して来てね。才能の無い奴は、例外無く円卓の騎士の座を奪われ、剥奪の騎士の座に甘んじるしか無くなった」  ナイト・オブ・フィフティーツーの称号を持つミュータントの女性は、射殺す様な鋭い眼差しで静久を睨み付ける。 「アタシ等、剥奪の騎士は必ず円卓の騎士の座に返り咲いてやる! 騎士としての誇りからは外れたとしても、あの円卓の高みからの眺めは何物にも代え難いからね! その為には、今回の戦争でアンタ等を殺す必要があるのさ! 確実に勝てる弱い相手なら尚更ね!」
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