第百十六章 藤黄の鎌

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 唐梨子はそう鋭く叫ぶ様に言い放った後、勢いと速度を殺された不倶戴天山荒の鉄球を自身へと引き寄せ、再び静久目掛けて勢い良く投擲する。 「だから、テメェはここで潰されろ!」  自身へと窮迫して来る二つの鉄球を眺めて、土宮家の嫡子は実につまらなそうな表情を浮かべていた。 「下らない。円卓の騎士の座なんて、そんな下らない物に固執するが余りに、最も捨てて行けない物まで捨ててしまうなんて」  藤黄の支援者と謳われたミュータントの少年は冷ややかさを感じさせる口調で言い放った直後、両手に持っていた阿修羅鎌を脇へと投げ捨て、数拍の間を空けてから更に続ける。 「何にも執着せず、固執しなければ、人と言う物は限り無く自由になれると言うのに」  静久は左手を前へと翳して見せると、彼の左手の掌から藤黄色の輝きを放つ浮遊球体が出現する。  その藤黄色の輝きを放つ光の浮遊球体が水飛沫を上げる様にして弾けて消え去ると、代わりに現われたのは一つの大きな弓状の武器だった。  美しい装飾が施されたアーチェリー型の弓だが、弓なりの部分には藤黄色の刃となっており、弓と言うよりは曲剣と言った方が正しいかも知れない。そのフレーム部分にはルビー色の鉱石が嵌められていて、その外観はとても美しい。 「天上石搭載型御剣式阿修羅武装・コアトリクエ」  土宮家の嫡子は誇らしげな口調で自身が具現化した新たなる武装の名を口にして見せた後、コアトリクエと呼ばれた弓のAS粒子で構成された弦を引く。  すると、それに連動するかの様にして、藤黄色の光を放つAS粒子を高濃度に圧縮された矢が出現し、コアトリクエへと装填される。 「シュート」
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