第百十六章 藤黄の鎌

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   1  東京都御陵市に位置するハンター連合総本部ビル内部の東側通路をひたすらにではあるが、どこか楽しげに走るのは、一人の少年と、パグの小型犬の阿修羅尾獣パグ太郎だった。 「毬」 「リンボーダンス」  少年が呟く様に言うと、パグ太郎も呟く。  少年の方は、ウェーブの掛かった艶のある短い藤黄の髪に砂漠を彷彿とさせる藤黄の虹彩を持つ瞳、雪の様に白く透き通った肌に美しい端正な顔立ち、その身に膝まで丈のある漆黒のロングコートを纏っていた少年だった。  彼の名は土宮静久。四大貴族守護二家の一家である土宮家の御曹司のミュータントの少年で、ミュータント管理局に務める管理局近衛兵の一人にして、補給部隊の副隊長を務めている。そして、藤黄の支援者と謳われる程の実力者である。  静久の特殊能力は主に二つ。体内に搭載された特殊基幹ASプロトドライヴから精製されるAS粒子を駆使する能力と、阿修羅鎌と呼ばれる藤黄の鎌を具現化して操る能力を持っている。 「スリ」 「理科」 「狩り」 「リスク」 「栗」 「また、〝り〟かいな…?」  土宮家の嫡子の淡々とした物言いに対し、パグ太郎はどこか怪訝そうな口調で呟かずにはいられなかった。 「しりとりをする上で、同じ文字から始まる単語を連続して出すのは戦術の内です」  藤黄の支援者と謳われたミュータントの少年の物言いを聞いて、小型犬の阿修羅尾獣は思わず唖然としてしまう。 「しりとりって、微笑ましい遊びやのに…」
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