第百十六章 藤黄の鎌

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 女性の放った鉄球が受け止められたのだ。  静久が咄嗟に具現化した藤黄色の二本の大鎌の柄の部分によって。  その大鎌の名は阿修羅鎌。現役時代の第一世代ASドライヴ搭載者候補である土宮静琉の駆る阿修羅鎌零式を基盤にして作られた鎌型の阿修羅武装で、武装内部にASプロトドライヴを搭載している。  他にも、八式解放によって阿修羅鎌八式解放へと切り替えるシステム、左右の阿修羅鎌を変形させて連結させてサイスモードからボウガンモードへの切り替え、刀身部にAS粒子を纏わせて切れ味の上昇、そして、柄の伸縮を自在に行なうと言う性能を持っている。  土宮家の嫡子は阿修羅鎌を振り払い、受け止めた鉄球を押し返して見せると、再びパグ太郎へと視線を落とす。 「離れて下さい。万が一貴方を戦闘に巻き込んでしまいますと、瑞穂様を見つけ出す事が出来なくなってしまいますので」  藤黄の支援者と謳われたミュータントの少年が諭す様な口調で言って見せるので、パグ太郎は少しばかり迷った様な表情を浮かべてしまう。 「大丈夫なん? めっちゃ強そうやで?」 「どうでしょう? 実際に戦って見ないと分かりませんが、多分平気だと思います」  静久の返答を聞いて、パグ太郎は若干安心したのかその場で踵を返して彼に背を向け、その場から離れる様にして立ち去って行く。  小型犬の阿修羅尾獣が自分達の戦闘に巻き込まれる心配が無いと思われる距離まで走ったのを確認してから、土宮家の嫡子は目の前の女性へと視線を移した。 「さて、これで気兼ね無くやれますね」 「アンタ、随分と余裕だね」  藤黄の支援者と謳われたミュータントの少年の反応を見て、女性はどこか怪訝そうな口調で言う。 「何か問題でも?」
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