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彼女の疑問の深意を理解出来ないと言った感じで、静久が怪訝そうな口調で確認する様に尋ねる。
「フツー、不意討ちとか、非戦闘要員の仲間を攻撃されたら、怒ったり、動揺したりするもんじゃないの?」
「そう言う物ですか?」
女性の物言いを聞いて、土宮家の嫡子は疑問を深くした様に不思議そうに小首を傾げて尋ね返してしまっていた。
「生憎、僕は後方支援担当の補給部隊所属ですからね。僕自身、定石だと思いますよ。非戦闘要員の後方支援者を絶つと言うのは」
藤黄の支援者と謳われたミュータントの少年が慣れた口調で平然と応えて見せるので、彼の目の前の女性は何とも可笑しそうに、プハッ、と盛大に噴き出してしまった。
「なるほど! アンタ、どっかぶっ壊れているんだね! 良い感じの人でなしだよ、アンタはさ!」
女性は哄笑染みた口調でそう叫んで見せた後、数拍の間を空けてから床に転がっていた鉄球を引き寄せ、数拍の間を空けてから更に続けて言う。
「でも、気に病む必要は無いよ。アンタのその破綻した人格も、この鉄球を頭に喰らえば多少は矯正されるから。だからさぁ、安らかに逝っちまいな…!」
女性はそう叫ぶ様に言って見せた後、鉄球を静久目掛けて飛来させる。
しかし、土宮家の嫡子は僅かにその身を翻す事でそれを容易く回避し、その場から凄まじい速度で駆けて、女性目掛けて突進する。
砂漠と言う踏ん張りが利かず、足を砂に取られる劣悪な環境で特訓を重ねた彼の脚力は凄まじく、特殊能力無しでの脚力だけならば第二世代のASドライヴ搭載者候補の五指に数えられる事だろう。
―速い…!
それを見て、女性は僅かに動揺する。
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