歩むべきは「明日」

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 怒りを持って怒りとなす。  憎しみを持って憎しみとなす。  憎しみは果てなき怒りへの扉。  怒りは果てなき憎しみへの扉。  輪廻する負は無限に続く。  さあ、愚かな者どもよ。  憎しみを以て罪となれ。  我が裁きを以て罰を下す。  消え去れ、愚かな人間ども。  そして爆ぜろ。  無限の負の世界よ。 <魔王>の発した声は、耳ではなく、魂に聞こえてきた。  透き通った声。  だが、感情の無い声。  ラビィなどの〔オートマトン〕とは根本的に違った感情。  本能が訴えてくる。  早く逃げろ、と。  もはや周りは暗く染まっている。  光など、闇にあっては無力なものだ、と思わせてくる。  だが、体が動かない。  すくみあがったかもしれない。  だが、腕一本、指一本すら動かない。  眼すら<魔王>から離れない。  後ろから、何かが走ってくる。  視界の隅から、<魔王>に向かって、駆け抜けていく。  イスラだ。  何故? という意思より、危ない、という意思が先だった。  イスラが<魔王>に触れようとしたその時、闇と光が爆ぜた。
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