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「…やれやれ、何て生徒だ…」
深く、低い声は、音がないはずのこの場所に響き渡る。
闖入者は、頭からねじれた二つの角が生やしている。
ラクの位置からではよく見えないが、<魔王>の腕を止めているのだろう。
イスラが尻もちをついている。
そして、予想が当たっていれば、眉間には深いしわが刻まれているだろう。
きっと、愛用している単眼鏡は、ない。
「…私は帰ってきた。再び、ね…」
虚空より取り出した大ガマを一閃。
<魔王>の肉体が分散する。
そして、カマを<魔王>がいた場所に突き立てる。
「…さて、これで少し時間が稼げますね…」
闖入者――ヴァージル先生――は振り返ると、ラク人形と、イスラとゴードン、イリスを視界に収めた。
「…説教には少し邪魔ですね…」
あくまで『説教』しようとするヴァージルは、5人に増えた。
高速移動により、できた残像だ。
残像は、実体を持っているかのように5人を担ぐと、外に向けて放り投げた。
「…これでよし、と…」
分散していた<魔王>が、元通りの姿に戻る。
――貴様、何者だ。
「…私のことを忘れるとは。…課題3日分、追加だ。アルカナム」
<魔王>はヴァージルの使っていたカマを持つと、一気に腐っていった。
「…私のお気に入りが…さらに4日分追加だな…」
そう言いながらも、また虚空より大ガマを取り出す。
今度は、9つ。
少しずつ離れた場所に突き刺さっていく。
「…さて、可能性を超えた<超律>の力を食らうがいい…」
ヴァージルもまた、9人に増える。
――我に刃向ける気か。面白いぞ、人間。……消えうせるがいい!
『…教師にタメ口か。…さて、次は1週間分追加だ。アルカナム。……私の説教で元通りにしてやろう…』
9人全員が同時に言葉を発した。瞬間、姿が消えた。
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