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「こら、イスラ! 起きろ!」
「ん~……あと5時間……」
「こら! 遅刻するだろ!」
「…………」
「寝るな!!」
最近ではいつものことになったやり取りをし、イスラ――元・<魔王>であり、僕の兄――を叩き起す。
寝室は、学園長の取り計らいでベッドが一つ増えた。
狭くなった。でも、寝室には寝る時しかいないから、大丈夫。
そしてイスラを叩き起すと、冷蔵庫(これも学園長の計らいで取り付けた)に入ってあった食パンを二切れ取り出すと、半ば寝ぼけているイスラに無理やり突っ込むと、玄関で靴をはき、<陣>を兼ねる扉を開く。
学生寮である、この異空間では、ただ単に<陣>をつけるのもなんだから、という理由で扉化されている。
もちろん、呼び鈴的なものもある。
僕はもう食事をとったが、いかんせん自炊ができない。
いつも食事は食パン二切れ、しかも素で。
味気もなにもない。
もう一人が来ないので、ふと後ろを振り向く。
そこには食パンをくわえたまま床に倒れこんでいるイスラがいた。
僕はあわてて食パンを口から出すと、かなりの量の唾液がついていた。
しかも……
「……すぅ……」
寝てやがる。
「起きろ!!」
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