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僕の知り合いの友人が家で小さなおっさんを飼っているというので、見せてもらうことにした。
わくわくしながら、小さなおっさんが飼われている二階へ向かい、ドアを開けるとすぐに水槽が目に入った。
「ほら、この人だよ」
小さなおっさんを飼っているその人が、少し無愛想に言った。あまり見せたくなかったのだろうか。
水の中に生息している、おっさんは、身長約三十cmで、髪は黒くて七三分け、顔は少しふっくらしている。体は体操選手や格闘家のような鍛え上げられた体つきだ。服は黒のタンクトップに黒の短パンで、心臓を突き刺すような鋭い目つきが特徴的だ。えらはどこにも見当たらない。どうやって呼吸しているのかは謎だ。
僕は軽く会釈をした。しかし、おっさんは瞬きもせず、ただ僕を睨みつけているだけだ。
しばらく見ていた僕は、飽きてきた。そして、ちょっとおっさんをからかってみたいという衝動に駆られた。どうせ人間じゃないから言葉も分からないだろうし、水槽の中にいるから安心だ。
そう思って、おっさんにあっかんべーをしてみた。心なしかおっさんの表情が、ぴくついた気がした。でももう二度と会うことはないだろうと思い、お別れの意味も込めておっさんに、くちぱくで、ばーかばーかと言った。
おっさんの手がゆっくり動いた。
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