違和感

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ソファ兼ベットと化しているそれに腰掛ければ、開きっぱなしのノートパソコンの電源を付ける。Yahooチャットや今では既に有名になったMixiなどを確認しながメールやチャットに没頭する。濡れた髪が程好く乾き始めた頃、無意識に左手を伸ばして机の上を弄る。しかしいつもならそこに置かれている筈の飲み物を用意していなかった事に気づいて、面倒に思いながらも私は再び台所まで足を運んだ。未だに作業を続ける祖父を横目に食器棚からコップを手に取り古い冷蔵庫を開くと、屈んでペットボトルのお茶を取り出し扉を開けっ放しにしながらコップにお茶を注ぐ。並々注いだコップを慎重にテーブルの上に置くと、ペットボトルの蓋を軽く締めて冷蔵庫に戻す。すると再び祖父が声を掛けてきた。 「こるく、…今日は水曜日か?」 「は?さっき聞いてきたやん、水曜日やけど。」 何度も同じ事を聞く祖父の発言に半ば苛立ちを覚えながら投げやりに言葉を返す。そうか、聞いたかとへらへら笑うその顔に呆れながらテーブルの上に置いたままのコップに口を付け、満杯だったお茶を少し減らすとコップを手に取りそのまま応接間へと向かった。 これがこれから私達家族が経験する認知症と言う病気との格闘の前兆だと言う事は、この時私は知る由もなかった。
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