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はたして、男の行動それ自体は、なんら道理に逸れた行動ではなかったはずである。
しかしながら、男はー切捨御免ーこの極論に到達するまでに二つばかりの失態を犯していた。
切捨御免とは元来、切る者と切られる者の双方にとって命がけの行為であるにも関わらず、両者の間で命を張るという確固たる覚悟がなされていないまま、感情に流され刀を振ったこと。
そして刀を振ったその刹那、初めて目があったこの老いぼれの哀れんだ瞳に、一瞬邪念を抱いてしまったこと。
結果、男の剣先は老父の首筋をわずかに逸れ、肩のあたりを斬りつけた。
肉が裂け、骨に刃が届き、生臭い特有の香りが辺りに立ち込めたとき、男は我に返った。
べっとりとした血糊が付着し刃が欠けた刀と、激痛に顔を歪ませのた打ち回る老父を順に見比べ、男は事の重大さを自覚した。
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