3人が本棚に入れています
本棚に追加
セレニアは、まじまじと彼の方を見つめた。否、正確には、彼の“耳”を。
本来、耳とは顔を正面から見て、ほぼ目の高さにあるはず。だが、彼は違う。あるべき場所にある耳は無く、変わりにふさふさとした耳が頭についていた。
(……猫耳?)
セレニアの頭に浮かんだ一つの言葉。だが、そんなことはありえない。彼は人の姿をしている。そんな人に猫耳など、カチューシャかなにかでなければ、まずありえない。
しかし、セレニアのそんな考えは一瞬で覆された。ふわふわとした耳が、ピクリと動いた。
どこからか物音が聞こえたのか、視線をセレニアからずらす。そして再び視線を戻すと、ゆっくりと自らの手をセレニアに伸ばした。
瞬間、セレニアは目を瞑る。……が、痛みがあるわけでもなく、物音ひとつしないので目を開けると、ある一点を指し示していた。ペリドットのような緑色の瞳がまっすぐに示す先にあるものを見ていた。
最初のコメントを投稿しよう!