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「見て」
「何?」
投げかけられた言葉に従い、示す方向の後ろを振り返る。
木の上から彼が示した場所には、
「石の輪?」
彼はこくりと頷いた。
昨日精霊たちが並べて遊んでいたものだ。丸い小さな石が輪のように並べられている。
「踏むなよ?連れて行かれるぞ」
「どこに?」
男の子の方を向き、聞き返したが、彼は艶やかに微笑んでいった。
「~……。」
彼が微笑んで言ったその姿に、何故かう薄ら寒いものを感じた。約束、と木の上からまた手を伸ばしてくる。
セレニアはその手に思わず触れると、彼は満足気に笑い、その笑みを最後にセレニアの記憶は途切れた。
それ以来だ、セレニアの言葉に精霊たちがあまり応えてくれなくなったのは──。
ほんの少し前の話なのに、そのひとがなんと言っていたのか忘れてしまった。少年のように無邪気そうで、でも大人のように落ち着いた雰囲気も持ち合わせていた彼に、もう一度会ってみたいと、最近よく思うようになった。
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