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「昨日帰ってもエレナがいなかったせいで……」
「ごめんって。ユリアスに勉強教えてって言われてさ……」
クラスメイトのユリアスは真ん中くらいの成績を保っているが、エレナ大好きのため、なにかにつけてエレナを連れまわす。もちろん、彼女もセレニアを嫌う一人であることに間違いはない。
エレナが顔の前で両手を合わせながらごめごめんと言っているが、セレニアはムスッとしたままだ。机の平たい部分に頬をくっつけて窓の外を見る。セレニアの視界に入り込んでしゃがむと、セレニアを見上げながら言った。
「……めずらしいね。セレニアがそんなに怒ってるの」
小首を傾げて聞くと、セレニアは反対の方へと顔を背けた。唇を尖らせ、まるで幼子(オサナゴ)のようにゆっくりと喋る。
「怒ってるんじゃない……昨日眠れなかったから、エレナに罰」
「なんで?」
「あー!もう!とにかく、なんでもないんだからね!」
机をバンッと叩いて、セレニアは席を立ち去った。
「……ありゃ重症だな。なにかあったのか?」
再び小首を傾げた。
机を見ると、そこには猫を擬人化した猫耳がついた人の絵が落書きされていた。
「……ファンタジー世界に目覚めたか」
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