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教室の中央、そこには大きな魔法陣が描かれ、その中央に白地に肩に赤いラインが入った制服を着た少女が佇む。
頭上には黒い獣。それらはそこらじゅうを飛び、地を走り回り、宙を漂っている。
「ちょっと……!」
そう呼び掛けるとセレニアは、この緊迫した状況におおよそ似つかわしくない返事を返した。
「え?」
本当に疑問に思っているのか、小首を傾げて見つめている。
……わからないのはこっちだ。
彼女達がいる教室は通称、『連想室』と呼ばれている。
今日、ここでは『精霊召喚』という科目がテストされることとなっていた。数十人の師範と呼ばれる教師がテスト中に不正行為が行われないように目を光らせ、セレニアと同じ生徒も、師範の後ろでテストを受ける者を静かに見ている。
テストはおよそ5分程度で行われる。精霊を呼び出すために必要な布陣を描き、術を詠み、そして呼び出す。ところが、セレニアにいたっては、全く違う、精霊とはお世辞でも呼べないようなものを召喚した。
「どうして合成獣呼び出したの!?」
呼び出すように言われたのは精霊だ。……セレニアが呼び出したのは合成獣。獣の姿をしたモノ。
師範の判断でクラスメイト達は教室の外へ避難していた。
突然喚ばれて気が立っている合成獣、平和で呑気に宙を漂うマイペースなやつ。生徒の鞄を漁り、お菓子などの食料を見つけ盗んでいくもの。
いろんなヤツがいるが、合成獣とは書いて字のごとく、獣のような姿をしていて、個々によって姿も違う
人の手によって創られ、棄てられたものが自然と増えたものだといわれている。
そのせいか、その性質はほとんどが狂暴であり、時には人を襲う。
悪魔や魔物に分類され、唯一違うのは、人が創ったということ。
勿論だが、今では合成獣を創ることは禁止されている。
その禁忌を犯した者は、殺処分、永遠の苦痛を与え続けられることとなる。
「セレニア……」
クラスメイトが声をかけるが、彼女は答えようとはしない。
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