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前線ではユウナ師範を含む3人がティルを顔の顔の左側から上へと一気に振り上げ、前へと投げつける。
ティルを打ち込まれた合成獣は、ギャアッと一声あげると、燃えるような赤い光に包まれ消えて行った。
特殊な呪文を唱えるなどしてしばらくすると、暴れ回っていた合成獣は全て消えて事なきを得た。
見るも無惨な状態となった練習室。後には、教室掃除が残された。
練習室の掃除は普通、当番制でやることになっている。
一部の生徒達が、先ほどからじっと此方を見つめている。多分、掃除当番の生徒だろう。確か、なにか諺(ことわざ)があったはずだ。えっと……目は口ほどに物を語る?
セレニアはその場所から動けず、自身が描いた魔法陣の上でたちつくしている。周りを見渡せば、師範やクラスメイトの視線が痛いほどに突き刺さる。
「……その……ユウナ師範」
生徒の塊の中にいる一人が、手をあげ、師範を呼んだ。
「……何ですか?エレナ・アメティスタ」
「練習室の掃除、私達二人でします……」
ユウナ師範少し不機嫌だったのか、ため息をついて言った。
「そうしなさい」
◇◇◇
カチャカチャとガラスがぶつかる音が静かな教室に響き渡る。荒れた教室の掃除をする二人は、黙って手だけを動かしていた。 大方片付け終わる頃、ぼそりとエレナが言った。
「失敗は誰にでもあるよ」
「……うん。でも、テスト駄目だったよね」
「……再試があるよ」
とエレナが言った所で、タイミングよく、校内放送が流れた。
『お知らせします。セレニア・グラナード。今すぐに魔導師範室に来なさい』
「ほら、言ってるそばからお呼びだしだよ」
「お願いだから楽しそうに言わないでー!」
泣く泣く教室を出るセレニアの背を見ながら、戻ってくるのを待ってやろうと思い、イスに腰をかけた。
見渡してみて、掃除をしたがしたように見えない教室に溜め息がでる。幸せがこれでどれだけ減ったのかと思うと、また溜め息が口から出ていく。
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