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重い足取りで向かうのは、教師たちがいる師範室。 扉を三回ノックした後、中からの声が聞こえると、扉を押して入った。
「失礼します。ユウナ師範はおられますか?」
「来たか。呼んだのはテストの件なのだが……」
「再試……ですよね?」
恐る恐る聞くと、師範は厳しい顔をして、頷いた。
分かりきってはいたが、改めて聞くと、気分は良くないものだ。
がっくりと肩を落として、ふと師範室を見渡すと、そこにいた師範は全員、偶然にもセレニアが呼び出した合成獣の後始末に来た師範だった。 気まずくなり師範室を後にしようとすると、明日の放課後が再試だと、師範の槍のような言葉が後ろから投げられたが、返事をせずに師範室を出た。
◇◇◇
「はぁ……」
教室に戻り、明日が再試だとセレニアは溜息とともに吐く。そんな姿を見て、エレナはセレニアの髪をぐしゃりと崩した。何事かと顔をあげたセレニアは泣きそうで、でも泣かないように口の両端に力を入れているのがわかった。
「あんたはあのセレニアでしょう?」
その言葉で一年生だった頃を思い出した。一年前も精霊召喚の授業はあった。一年生は基礎中の基礎で、呼び出したりはしなかったが、セレニアは授業中に教科書に書かれた呪文を読むだけで精霊がよく表れていた。普通は、その呪文の意味を知らなければ精霊が現れることはない。それがなぜか、セレニアには自然と出来た事なのに、今の彼女には精霊を呼び出す事が出来ない。
精霊を呼び出そうとすれば、逆の存在である合成獣がでてくる。しかし召喚魔導師になるには、精霊が呼べなければ意味がない。自然と、セレニアの声は沈む。
「……ま、頑張んなさいな。練習なら付き合ってあげるから。あんたならできるよ。でも合成獣だけは止めてよね…。」
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