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エレナの言葉に反応したのか、彼女の周りに緑色の光が集まる。
光はやがて、大中小と三つの形をとった。
『誰だ、読書中に俺を呼び出すのは』
『女の子だあよ~?きついこと言ったらダメだあよ?』
『人の娘が我らに何の用ねる?』
シルフにシルフィード――〈風の精霊〉。
中央に大きなシルフと両サイドにはシルフィードが、真っ白な羽を広げてエレナをもの珍しそうに見下ろしている。
「アリエル、読書中に呼び出してごめん……。少しの間だけ助けて欲しいの。大きな音が聞こえても、広くは響かないように風で覆ってもらえるかしら」
『あいわかった』
『かわいい女の子のお願いだあよ~』
『人の為に我らを呼んだねる?よかろう』
風が舞い、木の葉が飛び散る。分厚い大きな雲が周囲を覆う。
シルフを簡単に呼び出したエレナに嫉妬心を少し抱くも、練習ができる場が整ったため、気を引き締める。
「さ、始めましょ」
セレニアはこくり、と頷いた。
「彼の者に告げるは
誇り高き水の旋律
我が悲哀に応えよ」
すうと息を吸い込み、静かに朗々と声を紡ぐ。
どこか神聖ささえ漂っていて、心地よい。
……だが、今度も精霊は応えてはくれなかった。
「ねぇセレニア。あなたが今の状態になったのって二年生になってからよね?何か心当たりはないの?」
腑に落ちないといった表情で声を出す。セレニアは、ないとは言い切れなかった。曖昧に微笑んで、わからないと小さな嘘を吐いた。
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