大谷×三成

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「三成…ヌシにはいつも世話をかけるな…」 大谷は、病に犯された己の身体を忌々しげに見つめた。 そしてその身体を慣れた手つきで清める三成をちらりと見る。 三成はまたかといった顔で、小さくため息をついた。 「刑部……何度も言わせるな。私はこれを面倒だと思ったことは一度もないし、寧ろ…」 寧ろ、喜んでやっている… そう言いかけて、口をつぐむ。 「寧ろ…?」 不自然に言葉を止めた三成に、大谷は怪訝な視線を向けた。 「いや…その……笑うなよ?」 「笑わぬ」 「寧ろ…喜んでやっている」 大谷は決して三成以外の人間に、その素顔…そして素肌を晒さない。 その事が三成には嬉しかった。 自分が…自分だけが大谷にとっての特別な存在だと実感できるひととき… 赤くなる三成の頬を、大谷は優しく撫でた。 「では、これからは礼を言うとしよう…ありがとう…三成」 「そうだな…謝られるよりは気持ちが良いな」 三成は照れたように笑った。 その笑顔が大谷には眩しくて… 「三成だけだ…我に微笑みかけるのは…」 「……私だけでは不満か?」 何処と無く寂しげに言った大谷に、三成は心底不機嫌に言った。 「これはこれは…三成殿は存外と独占欲が強いと見える」 大谷がおどけてみせた。 「あぁ…そうさ。私には刑部……お前さえ居てくれればいいのだ。だからお前には私だけでいい…違うか?」 「いや…違わぬ」 今しがた清潔な布に代わった白い腕で、大谷は三成を抱き寄せた。 「あ…刑部!!」 それだけで、三成は頬を染める。 そして十分な幸せを感じることが出来た。
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