春の章

2/30
前へ
/113ページ
次へ
  新学期の時期と、桜の開花が重なる地域に住む私は本州に住んでいる。 申し遅れたが、私は、私自身を物語にした場合のみに於いて主人公になる。そうとだけ言おう。後は秘密だ。 何故なら、私が読者なら私の事をわざわざ知ろうとは思わない。有益な時間を求めるのならば、人気の美人な俳優やアイドルの名前を覚える事を強くお勧めする。つまり強要だ。 そんな事はさて置き、春休みも終わり今は新学期初日である。二回目の三回生と言うこともあり新鮮味などは皆無である。言うなれば今の私は古新聞。古く且つ新しいと言われる矛盾を内包していてホニャラララ……。そんな訳の分からない屁理屈はともかく、入学式真っ最中であろう昼前の時間帯に、私は部屋に散らばる窓ガラスの破片を片付けながら、柱に刺さった矢を恨めしげに眺めている。 仕事や学業の連絡事項、友人との有意義や無意義なやり取り、上級者になれば恋文代わりにしたりする電波でのやり取りが手段が普及した現代に於いて、時代錯誤も甚だしい矢文を私の部屋に撃ち込んだ人が居るのだ。 そんな事をするのはあの人しか居ない。先日、天狗神社で出会ってしまったあの人だ。 あの人は何故か強制的に私の師匠になり、師事という聞こえのいい言葉に奴隷にされた私が居る。 奴隷扱いはされないが、些か理解に苦しむあの人の言動は、人と言うよりも怪人じみている。呼んでも良いなら変態の一言に尽きるが。
/113ページ

最初のコメントを投稿しよう!

46人が本棚に入れています
本棚に追加