始まり~琴羽編~

2/5
5人が本棚に入れています
本棚に追加
/43ページ
 今日も私は外で座っている。  泣き叫んだ所で暖かい部屋には入れるけれど、それが純粋な『暖かさ』じゃない事は、六歳にしてもう理解していた。  だから大人しく玄関で座り込んでいる。 「何度言えば解るんや! お前なんかいらんわ! 出て行けやっ!」  十分に気をつけているつもりだった。  自分で言うのも変だけど、六歳にしては滅茶苦茶行儀良く丁寧に食事してたつもりだったんだ。  今日もいつもと同じ具無しラーメンを静かに食べてたのだけど、母親の彼氏から丁度電話が掛かってきて、更に静かに食べようとしたらちょっとだけ汁が飛んだ。  運の悪い事にそれが母親の腕に付いてしまった。  今晩彼氏と会う約束をするはずの電話を切った母親に、ボコボコに殴られたのは言うまでもなく、今日は特別な日なのに彼氏と会えない事に苛々しているからといつもより酷い仕打ち。
/43ページ

最初のコメントを投稿しよう!