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「と…虎之介」
「ぷっ…全然似合わねえ名前…おい虎ぁ…今日の相手はおまえだ」
「「「えぇ!!」」」
まわりから悲鳴があがり、嫉妬と憎しみの混じった視線が虎之介を突き刺す。
「嫌だ!」
「へ?」
その場にいた誰もが驚き、やがて妬みから湧き上がる怒声と罵声…
「へえー。おまえ…気に入った」
目を細めた黒月の瞳に妖しい光が入り、虎之介は髪を掴まれていた。
「痛い!やめて!」
「あ…俺。もう帰る。車まわして」
黒月は携帯で誰かに電話し、『俺とコイツ、早退』と言い残し、もがく虎之介を引きずるように連れ去った。
「アイツ…馬鹿だよなあ」「素直に愛を受けちゃえばいいのに」「でも、どうせ一時の遊びだからな」
2人が外へ出ると、大きな黒い車が横付けされていた。
「いつものとこ…」
走り出した車の中でも、黒月は虎之介の髪を離さない。
「痛いよぉ…もう離して…お願い」
頭の上の黒月の手を握り、痛みの為、大きな目を涙で潤ませ訴える虎之介を見て、黒月は自尊心を少し回復させた。
「黙って、じっと大人しく座ってろ」
突き放された虎之介は、震えながら座席の端までずり寄り、何かわからない恐怖に自分の縞の尻尾をギュッと持っている…
虎之介のそんな様子を横目で一瞥し、黒月はニヤリと口端を上げた。
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