27人が本棚に入れています
本棚に追加
「まあまあ」
新太郎はなおも何か言おうとする紗希をなだめ、ようやく雄一郎の問いに答える。
「今回の旅行は一夜にして消えた八帖村(ハッチョウムラ)伝説を追ってのハイキングにしようかと思ってる。 8月17日から二泊で、近くの山村でお年寄りの話を聞いたり、実際に跡地に行ったりかな?」
「ハイキング? 確か某県の外れだよな? どうやって行くんだ?」
「えーと、山道の入り口がパーキングのすぐ裏らしいから、そこまでは高速バスでいこうかなぁ……と思ってるんだけど?」
新太郎はチラリと紗希の様子を伺いながら説明する。
「大丈夫かよ?」
ハイキング自体が面倒なのか、難色を示す雄一郎とは対照的に紗希は前向きである。
「いいじゃない、ハイキング!! 今までで一番面白そう。 あたしお弁当作ろっか?」
珍しくはしゃいだ調子の紗希に雄一郎がからむ。
「へぇ、紗希ってそういうの好きだっけ? なんかアレだねぇ、そういうのめんどくさいとか言うほうじゃなかった?」
雄一郎の問いは、今度はカランカランと響くチャイムによって遮られた。
「あら、もうこんな時間? さて、それじゃ二人とも補講もらわないようにしっかりね!! じゃ」
最初のコメントを投稿しよう!