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「君が、烏丸快斗(からすまかいと)君だね」
上を見上げると、白衣を着たおじさんが立っていた。
無精髭と、温かい笑顔が印象的な人だ。
「そうだけど……、おじさんは?」
知らないおじさんには付いていっちゃ駄目って言うからね。
彼は笑顔のまま言う。
「私はある研究をしていてね。君のお父さんと同じだよ」
「パパと?」
「そうだよ。パパと同じ、人を救う仕事をしてるんだ」
“人を救う”。五歳の僕にとっては、この言葉はとてもかっこよかった。
「へー、すごいね!」
「だけどね、それには君の力が必要なんだ」
「僕の?」
幼稚園の先生からは『烏丸君の魔法は珍しいね』とは言われたことはあるけど……。
「これを観てくれるかな」
おじさんはパチン、と指を鳴らすと、映画のスクリーンのような画面が浮かび上がる。
あまりの突然さに、心臓が飛び出そうになった。
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