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映像に視線を固定したまま、
「奴だ」
と小さく、しかしはっきりと呟いた。
画面では巨乳キャスターがにこやかな笑顔で原稿を読んでいる。
「この司会の人が『聖隷の魂』だってのか?」
「違う」
「じゃああと誰が……、」と悩みかけてから気付いた。「……なるほど。ロシアか」
「ご明察」
アプサラスの言っていた通りか。ロシアにいたんだな、『聖隷の魂』は。
「『聖隷の魂』は、ロシア皇太子か」
及川は無言で頷いた。
「だろうね。僕の調べた結果とも合致する」
口調とは裏腹に、彼はポテトをつまんでいる。
複数掴んだポテトを口に運びながら、
「だとすると、一刻の猶予も許されないぜ」
「何かまずいことでもあんのか?」
それには答えず、及川は携帯電話を操作して誰かに電話をし始めた。
十秒ほど待ったが、一向に話す気配がない。繋がらないのか。
「くそっ!」
乱暴に携帯電話を折り畳むと、それをポケットにねじ込んだ。
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