静かなる虚空

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癖のない真っ直ぐでしなやかに背中辺りまで伸びる銀髪は、部屋の白い明かりをより鮮やかに、より美しく輝かせ、艶やかに光る。 それはまるで一つ一つ繊細に作られた銀細工のような美しさであった。 「お客様何かお飲み物はいりませんか?」 身だしなみと姿勢を綺麗に整えたスチュワーデスは、はっきりと相手に聞こえやすく、柔らかな声でその少女に声を掛けた。 その少女は窓から視線を外しスチュワーデスへと振り返る。 銀の髪が滑らかに肩を撫で、ハープの旋律が流れるように緩やかに、優雅に銀の髪は滑り落ちた。 スチュワーデスは振り返った彼女の顔を見るなり声を失った…いや、見とれてしまった。 肌は初雪のように白く美しい、その目にあるはエメラルドグリーンに透き通るように輝く瞳、窓から少し射し込む月の光は彼女を幻想的に彩る光、全てが緻密に計算して創られた宝石のような美貌は見る者全てを魅了するであろう。 「水を一杯頂けますか」 少女は綺麗なソプラノの声を奏でる。 「…はっ、はいっ只今お持ちいたします!」 スチュワーデスは石のように固まっていたが、首を数回振りすぐに自分の成すべき仕事を思い出し少し慌てながら、奥へと戻って行った。
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