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相川の言葉を聞いた広瀬がまた高橋の前に近寄ってくる。高橋は反射的に顔をうつむかせた。
「高橋くんっていうんだ…。さっきはごめんね」
と,彼女が高橋を覗き込むように顔を寄せてきた。
一瞬,目が合った。だが,高橋はぷいっと顔をそらす。
「あーもういいから、黙れ」
高橋は適当に手をぶらぶら揺らして,彼女を追い払うような態度をとる。
彼にとっては謝罪をされるだけでも面倒くさいのだ。
「広瀬さん,あれが高橋悠斗という人間だ。覚えておいてあげてくれ」
と,相川が説明しながら2年1組の教室に入っていく。広瀬は不思議そうな顔をして高橋を見つめていたが,やがて相川の後に続き教室に入っていった。
高橋たちも自分たちの3組の教室へと入る。
教室ではすでに席に着いている生徒が多かった。高橋と滝口も自分の席に着いた。
時刻はすでにホームルームの時間になっていたが,担任が来ない。
今日は蒸し暑く,外からはセミ達が騒がしく鳴いているのもあり,とても腹立たしかった。
いったい何をしているんだ。
「妙ね,5分も経ったわ」
隣に座る小柄な女子生徒がそう呟いているのが耳に入った。彼女の名は黒川瞳だ。
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