プロローグ

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 薄暗い室内で高橋悠斗(たかはし ゆうと)はゆらゆらと立ち上がった。まだ意識がはっきりとしていないようだ。  ところどころはねている髪の毛を適当に整えながら,意識の回復を少し待つ。  まだ視界はぼやけているが誰かが自分に声をかけているということは分かった。その声は前方からする。 『皆,目が覚め始めたみたいだね。大丈夫,落ち着いて』  それは前方にある,巨大なモニターから聞こえているようで,その画面には可愛いクマのぬいぐるみがぽつんと映っていた。  高橋はそのクマの何の感情も無い表情と,機械じみた不気味な声を多少気味悪く思い,鋭く睨んだ。 「…ここは,一体…?」  視線を声のした左下に移す。そこには同じクラスの黒川瞳(くろかわひとみ)がいた。彼女は頭を押さえ,後ろの壁にもたれかかっている。  高橋も思考を落ち着かせるため壁に背中を預け,大きく深呼吸をした。  そして,視野が広くなり,周りの様子もだんだんはっきりと見えだした。  どうやら状況は思った以上に悪いようだ。
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