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「うげっ」
高橋はその落ちてきた生徒と衝突した後,床にも頭を打ち付けた。
「すみません,すみません,すみません!!階段から足を滑らせてしまいました!!」
落ちてきたのは高橋と面識のない女子生徒だ。彼女はペコペコと頭を下げる。そのたびに胸の辺りまである艶やかな長い髪がゆらゆらと揺れる。
あまりに必死な彼女を見てはははっと,笑いながら横にいた滝口が爽やかに言った。
「大丈夫,大丈夫。怪我なんかしてないからさ」
ぶつかったのは俺だろ,と言わんばかりに高橋は滝口を睨みつけた。
「本当にごめんなさい!わざとじゃないんです」
冗談じゃない。わざと階段から落ちる奴がいるわけが無い。
「…俺よりも自分のことを気にかけたらどうだ?」
「わたしは大丈夫です。柔道部ですから」
と彼女は満面の笑みを浮かべる。
正直言っていることは訳が分からなかったが、高橋はその笑顔にしばし釘付けとなっていた。
頭の痛みで我に返った高橋は女子生徒を睨んだ後上へと上り始めた。
「本当に,すみません!」
最後にペコリと頭を下げ,彼女も階段を降り始める。これで,一件落着…とはならなかった。
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