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気品ある、豪勢な部屋。そこには三人の人間がいた。
僕としては漸く魔王を倒したのだから早く身体を休ませたいのだが……
「此度の魔王討伐、誠に見事であった。臣民を代表し、礼を言う」
髭を蓄え、豪華な服を着た男。これがこの国の王。
「勇者様、あなたが此方に来てはや三ヶ月、そろそろ故郷が恋しいと思う」
最初に抱いた違和感がより明確な形になる。
「我等にはそなたを故郷に帰す準備が出来ている」
魔王を倒した勇者はもう必要ない、そういうことか。だから僕が城に帰ってきた時、心底驚いたのか。
あの絶望的な強さを誇った魔王と相打ちになると確信して……
それとも、仲間の一人だったあの男が僕を暗殺できたと確信していてか…‥
「僕はもう必要ないと。今まで多大な利益をもたらしてきたこの僕が」
感情が凍る。冷たい声が響いた。
勇者は怒りを隠さず、だが語尾は荒げずに朗々と語る。
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