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「本当に損のないやり方だ。あなたたちはただ異世界から勇者を喚びさえすればいいのだから」
「いえ、違い──」
「──何も違わないでしょう。現に今の僕がそれを証明している」
僕の語った事実を否定しようとした姫様、間髪入れず僕はそれを否定する。
「もういい加減僕を騙さないでくれ」
つい先日まで好きだったヒトだけど、何一つ遠慮しなかった。それどころか見下すように冷たい眼差しで見据える。
「すまない」
「もういいですよ。ここでいくら文句を言おうとも僕には帰るしか選択肢はないですから」
頭を下げ謝られてもそれで済む問題でもないし、僕がどうこうできることでもない。
どうせこの王のことだ。僕が嫌々帰ったことを美談にして王朝をより固めるつもりだろう。つくづく僕は利用されるだけだな。
「もう一人にしてください」
そういい僕は立ち去った。姫様が何か言いかけていたが、彼女に僕を止める資格なんてない。
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