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断罪者と、その標的(ターゲット)。
そんな奇妙な関係の二人は、香奈の宿泊する旅館へと到着していた。
「ちょっと待っていてください。荷物、取ってきますので」
少し不機嫌そうな香奈に、隼人はやはり、馬鹿にしたような笑みを浮かべる。
「あぁ。じゃあ俺は、あの死体の処理係でも呼んでるよ」
そう言って、隼人は先程の携帯端末を取り出すと、携帯依存症の高校生かと思う程に、幾つものボタンを素早く操作する。
香奈は更に不機嫌そうな表情を見せながらも、直ぐに振り返って旅館の奥へと歩いて行った。
その様子を、隼人が端末を弄りながら横目で確認する。
「ま、逃げはしないか。何か変わった女だな」
そう呟き、隼人がふぅ、と息を吐いた、次の瞬間……周囲に香奈のものと思しき悲鳴が響き渡った。
「きゃあぁ! 嫌ぁ!」
「!? 香奈!」
隼人は素早く走り出し、悲鳴が聞こえた部屋の前へと辿り着くと、躊躇うこともなくその扉を蹴破る。
「……!」
強制的に開かれた扉の先、眼前に広がる光景に、彼は言葉を失う。
黒衣を纏った中学生くらいの少年が、赤く光る大鎌の切っ先を、香奈の方へと向けて立っていた。
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