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隼人の出現にも、少年は微動だにせず、その赤く光る瞳で香奈を睨み付ける。
「僕が斬るのは肉体だけだ」
寒気がする程に冷たく、それでいて透き通った幼い声が響く。
「罪深きその魂は、兄が斬ってくれるだろう」
「ひッ……!」
冷たい視線が震える彼女を貫いた瞬間、少年の持つ大鎌よりも一回り大きい鎌が、彼の眼前に現れた。
「待てよ。こいつは俺の獲物だ」
漸くその瞳が同業者の姿を捉えた、その瞬間、少年の表情が一変する。
少年は瞬時に大鎌を引き、隼人を睨み付けたまま、バックステップで部屋の隅へと後退した。
「『断罪ピエロ』!」
「その名で呼ぶなよ。そんな風に名乗った覚えは無い」
赤い視線がぶつかり合い、見えない火花を散らす。
「……あんた、逆雷 隼人だね。その女の命は僕が貰う。『自分の獲物』だと言うのなら、ちゃんと首を落としておけ!」
語り終えるが早いか、赤い煌めきを帯びた少年の大鎌が、勢い良く振り上げられた。
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