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半ば放心しながら二人の争いを眺めていた香奈は、漸く事の異常さに気付いて声を上げる。
「ちょ……ちょっと! あなた達は仲間なんでしょう!? 何で……」
「黙れよ、素人」
隼人の言葉が彼女の台詞を一蹴し、更に冷たい視線が追い討ちをかける。
しかしその言葉の続きを発したのは、少年の方だった。
「仲間? 仲間ね……。君は断罪者っていうシステムがどういうものか、まるで理解していない」
二人分の不気味な赤い瞳が、香奈に向けられる。
「断罪者も犯罪者も変わらない。『人を殺した者は死刑に処する』。その法律は断罪者にも適用される」
言葉を失った彼女は、不意に隼人と少年の顔を見比べる。二人の断罪者は互いに睨み合い、赤き視線が交錯する。
「断罪者が出逢えば、それは殺し合いの合図となるんだ。だから僕は甘えた考え方の兄を裁き、独りになった」
「……!」
隼人の鎌が少し揺れたのを、香奈は見逃さなかったが、少年は何も気付かずに話し続ける。
「兄は僕と組むことで何人もの犯罪者を狩り、断罪者としての信念を忘れた。ただの愚者だ。でも僕は……違う!」
少年は素早く隼人の鎌から逃れ、弾かれた自分の鎌を拾って身構えた。
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