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二人の断罪者は互いに睨み合い、相手の隙を窺う。
「僕は欠井 翔(カケイ カケル)。自分の正義を貫くために、パニッシュメントになった男だ!」
「ハハッ……」
真剣な眼差しを向ける断罪者を前に、隼人という名の悪魔が狂ったように笑い出す。
「ハハハハハハ! あははハハハははは!」
「な、何が……!」
その『何が可笑しいんだ』という叫び声は、笑い声と共に消えてしまった……ように思えた。
実際は見えない速度で振るわれた鎌の切っ先が、一瞬で翔の横の壁に突き刺さり、彼は驚きで言葉を失っていた。
「自分の『セイギ』? いやホント、笑わせないで欲しいなぁ」
先程までとは打って変わって、翔の顔には恐怖の色が浮かんでいる。
「君は二度も言ったよね。『魂は兄が斬る』ってさ。君は自分の『セイギ』とやらで裁いた兄に、今も縋って生きてるんだ」
――怖い。
ただ馬鹿にしたような笑みを浮かべているだけの隼人を見て、香奈は不意にそう感じていた。
「君の謳っている『セイギ』だ『パニッシュメント』だってモノは……」
「や、やめろ……黙れ!」
隼人が先程よりも目を大きく見開き、ゆっくりと翔に顔を近付ける。
「結局、自分の間違いを正当化しようとするだけの薄っぺらいモノなんだ」
見えない刃物が、確かに少年の心を切り裂いた。
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