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心の折れた断罪者を後目に、隼人は香奈の荷物を持ち上げ、そして、何事も無かったかのように歩き出す。
「行くぞ」
「えっ、でも……この子……」
心配そうにちらちらと翔を確認する香奈に、隼人は不思議そうな顔をする。
「君、さっきそいつに殺されそうになったんだよ」
「だけどぉ……」
――何か、放っておけないし……。
そんなやり取りをしている間に、翔が涙を拭いながら徐に立ち上がり、再び隼人を睨み付けた。
「お? 何だ、ガキ。続きをやるのかい?」
「ダメよ!」
翔の前に出て隼人を制止する香奈。その背後、翔は無言のまま、大鎌を持って窓の方へと歩き出す。
そして勢い良く窓を開き、ちらりと隼人の方を振り返った。
「君達は必ず僕が斬る。魂もね……」
「やってみなよ、翔」
「……やってやるさ」
少しだけ物憂げな表情を見せながら、翔は明るくなり始めた窓の外の風景へと溶け込み、消えていった。
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