裁く者、裁かれる者

8/10

1216人が本棚に入れています
本棚に追加
/821ページ
  心の折れた断罪者を後目に、隼人は香奈の荷物を持ち上げ、そして、何事も無かったかのように歩き出す。 「行くぞ」 「えっ、でも……この子……」 心配そうにちらちらと翔を確認する香奈に、隼人は不思議そうな顔をする。 「君、さっきそいつに殺されそうになったんだよ」 「だけどぉ……」 ――何か、放っておけないし……。 そんなやり取りをしている間に、翔が涙を拭いながら徐に立ち上がり、再び隼人を睨み付けた。 「お? 何だ、ガキ。続きをやるのかい?」 「ダメよ!」 翔の前に出て隼人を制止する香奈。その背後、翔は無言のまま、大鎌を持って窓の方へと歩き出す。 そして勢い良く窓を開き、ちらりと隼人の方を振り返った。 「君達は必ず僕が斬る。魂もね……」 「やってみなよ、翔」 「……やってやるさ」 少しだけ物憂げな表情を見せながら、翔は明るくなり始めた窓の外の風景へと溶け込み、消えていった。  
/821ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1216人が本棚に入れています
本棚に追加