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旅館を出た香奈は、ちらちらと隼人を見つめる。
彼は直ぐ様それに気付き、小さな溜め息を吐いた。
「さっきから何の用?」
「あ、えっと……大したことじゃないんですけど……」
「だから、何?」
あからさまに不機嫌そうな顔をして、持っていた香奈の荷物を置く。
「さっき、翔さんが『兄を殺した』って言った時、何か、思い詰めてたみたいだったので……」
隼人は一瞬驚いたような顔をした後、直ぐに顔を背けた。
「別に」
「そうですか……」
あんたには関係無い、と、彼の表情からそんな心の声を聞いた彼女は、直後に心無い質問をしたことを後悔し、視線を落とした。
そんな彼女の気持ちを知ってか知らずか、隼人は荷物を持ち上げ、大きく深呼吸をする。
「……俺の両親は、パニッシュメントに殺された」
「えっ……」
突然の言葉に、香奈は顔を上げる。
「殺人犯として追われてて、俺を連れて逃げてた。で、パニッシュメントに裁かれた」
香奈は何かを言おうと口を開いてみたものの、結局何も言えないまま、悲しげな視線を隼人に向け続けていた。
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