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春
まだ肌寒い時期だった。朝には道に霜柱がたつくらいの寒さだ。その寒い道を歩きながら林翔(はやし しょう)は考えていた。
(今日もいつもと変わらないな。小学校の卒業式が終わったってのに事の一つも起きやしねぇ。みんな真面目ちゃんすぎるだろ。)
翔はいつも思っていた。自分はちっぽけだから何かを変えるのは難しい、だから何か大きなキッカケが欲しいと。しかし、そんな事は簡単におきないと分からないほど馬鹿じゃなかった。
翔は大通りが嫌いだ。自分がちっぽけだと分かるから。だから散歩の時は小さい道ばかり通る。
(あと、三日で中学生か。何かおきたら面白いんだろうけどな。)
「んっ?あっ!翔じゃねーか!よう!」
どこからか声がした。まだ声変わりはしてない、いかにもな感じの声だ。
「あ?あぁよう匠」
翔がその声に反応する。どうやらその声の持ち主は翔の親友、早田匠だった。
はっきりいって、俺はこいつの考えが読めない。いつも予想外の事を言ってくるから。
「なぁ翔突然だが今日の午後さー、サイクリングいかね?」
本当に突然だな。しかしだりーな、適当に断っとくか。
「わり、今日俺午後から母ちゃんと買い物いくんだ」
「マジすか。じゃあ無理かー。行きたかったのになー」
こんな中途半端な時期にどこへ行こうというのだ。
「あ?サイクリングじゃねぇのかよ。どこ行くんだよ」
「え?翔知らんの?最近ものすごい走りをする自転車があるって。すぐそばの天守湖にたまに出るらしい」
「えっ?」
突然の会話で意味分からなくて申し訳ないが、この言葉で足りなかった歯車がはまった気がしたんだ。
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