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ザザっ!
若葉の木々をかき分けて、背後から誰かが歩いてきた。
気配を消す素振りもない。
ハッと気配に気付いて、後ろを振り返る。
赤茶色の正式服を着たクラスメイトの眞柴想一君だ。
彼は、あたしの緊張感を余所にして無防備に姿を曝す。
(危ない!! 来ちゃダメっ!!)
そう思った瞬間!
森の静けさを切り裂くようにして、自動小銃をフルオートで放つ銃声が鳴り響いた。
あたしの真上を、空気を裂く音と共に飛び抜ける銃弾たち。それらが着弾する木の幹からはバチバチと樹皮がはじけ飛ぶ。
春を告げたばかりの森の緑が、飛び散った鮮やかな赤い液体で染まった。
信じられないといった表情で、左胸を押さえたままがくりと膝を突いて倒れ込む眞柴君。
眞柴君の指の下からは、森の緑を染めたのと同じ、赤色の液体がにじみ出していた。
「眞柴君っ!!」
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