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「はっはっは。照れないでくださいよ先輩。先輩はあくまでも先輩で、どこまでいっても先輩であって先輩でしかなく、先輩以上にはなれないし先輩以下にもなれないんですから」
「僕は先輩以外にはなれないのか!?」
人生17年目にして新事実発覚。
しかしこれでは高校を卒業して大学に入学しても社会に出て企業に入社しても1年目にして先輩になってしまうではないか。出会って早々先輩面してくる後輩など不愉快以外の何ものでもないぞ。
いや、まあ、彼女の弁を鵜呑みにするならどうやら僕はどこまでいっても先輩でしかないようなので出会って早々だろうと先輩なのだが。
「つーか、ホントに記憶にないんだけど。キミのこと」
誰だったっけか。
というか、いつ出会ったっけ?
まさか昔生き別れた後輩とか?
「おやおや、私のためにあれほど獅子奮迅の活躍をしてくださったというのにもうお忘れになったのですか先輩」
「あん? 何だよ、その獅子奮迅の活躍って」
昨今のラブコメよろしく普段ダメダメな僕がお前のピンチに学校中を東奔西走したとでも?
「『焼きそばパン買ってこいや』って言えば解ります?」
「ただの使い走りじゃねえか!」
僕、先輩じゃねえの!?
後輩になっちゃってるんだけど。しかもあんまり良い感じの関係じゃなさげの。
食ってかかる僕をなだめながら彼女は言う。
「まあまあ。とにかく先輩、私のような可愛い若輩者を導けるのはやはり先輩のような愚かな人格者をおいて他にいないのですからいくら先輩が三歩歩いたら森羅万象を忘れる鳥頭でも私の事をお忘れなきようお願いしますよ」
「お前、絶対僕の事を先輩と思ってねえだろ」
後輩はそんな先輩を卑下するような事は言わない。
まあ、仲が良い後輩がいた事なんてないから知らないけども。
「さしあたっては先輩にセンセーショナルな世界の鬱り方を御教授いただきたいのですが」
「鬱り方!?」
憂い方ではなく!?
何だその斬新なラ行変格活用は。そっちの方がよっぽどセンセーショナルじゃないか。
空前絶後の活用系に驚愕し、それから露骨に顔をしかめた僕を、しかし彼女は気にもとめずに言った。
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