オトナの階段

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そもそもきっかけとなったのは、今年で小学三年になる弟からの素朴な疑問だった。 「ねぇ、にぃちゃん。よくマンガとかでさ、えっちなシーンを見た男の人が鼻血出すよね?あれってなんでなの?」 それは、我が弟ながらなかなか鋭い質問だった。 俺は弟より三歳年上の六年生。 しかも、だ。 テストはつねに百点満点。 算数なんてとっくに通り越して、中学一年の数学の問題だってスラスラ解ける「天才」だ。 俺にわからないことなんてない。 だから俺は、いとも簡単にその問いに答えたんだ。 「それはな、興奮が絶頂に達した時に起きる男性特有の生理現象だ」 「へぇー、そうなんだ!にぃちゃんは物知りだね!」 「うむ。えっちなシーンで鼻血を出して初めて、男は一人前になると言われている」 「へぇー!じゃあ、にぃちゃんもえっちなシーンで鼻血出したこと、あるの?」 「無論だ。それも一度や二度ではない」 「へぇー!にぃちゃん、カッコイイ!」 いや、本当は鼻血など出したことはないのだが。 こんなにもキラキラと光る弟の瞳に見つめられて、兄として首を横には振れまい。 だがこの時、 さすがの俺も、弟がこんなことを言い出すとは思ってもみなかった。 「ねぇ、にぃちゃん!ボクも…、えっちなシーン見て鼻血出したいよ!」
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