オトナの階段

5/10
前へ
/11ページ
次へ
やがてカメラはそのおねーさんの全身を映したところで止まり、画面の下に「木下ヴィエラ」と安っぽい明朝体の文字で表示が出た。 おそらく、この色っぽい女優さんの名前なのだろう。 「にぃちゃん、ヴィエラってなんだかヘンな名前だね…」 「そんなことはない。変わった名前はこの手の女優さんにはよくある。確か、他にもいっぱいいるぞ?」 「ふーん、たとえば?」 「…あのー、あれだ、…なんとかクリステルとか」 「あー!それ、ボクもなんか聞いたことあるある!」 だが、弟からの質問攻めはこれにとどまらなかった。 続いて画面に表示されたのは、 “B:88 W:59 H85” 「…ねぇ、にぃちゃん。この数字、なに?」 「ん?これは…だな、まぁ、この女優さんのパラメータみたいなもんだな」 「パラメータ!? へぇ、ゲームのキャラみたいでカッコイイね!で、“B”っていうのはなんのパラメータなの?」 「Bはな、“防御力”だ」 「防御力!? じゃあ、このおねーさんの防御力は88なんだね?それって強いの?弱いの?」 「うむ、なかなかに強い。俺の防御力がまだ50前後だからな」 「!?…このおねーさん、にぃちゃんより防御力高いんだ!すっげー!!」 「ちなみにHは“速さ”、Wは“運の良さ”を表す。運の良さにはやや欠けるが、なかなか均整の取れたパラメータと言えるな。この分なら次のボス戦も問題あるまい」 俺はそう答えて弟をあしらう。 Wが“運の良さ”というのにはやや自信がなかったが、まぁ、当たらずも遠からずといったところだろう。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

32人が本棚に入れています
本棚に追加